GALLERY MoMo Projects / 六本木では、6月25日(土)から7月23日(土)まで増子博子展「中洲的な人・くまにんげんになって」を開催致します。

増子博子は1982年宮城県生まれ、2008年宮城教育大学大学院教科教育専修修了、2007年にはトーキョーワンダーウォールに於いてTWW賞を受賞して東京都庁回廊での個展を開催し、2009年にはトーキョーワンダーサイト本郷でも個展を続け、翌年にはToyota Art Competition(豊田市美術館)にて優秀賞を受賞しました。その後も群馬青年ビエンナーレ(群馬県立近代美術館)に入選するなど、早い時期から高く評価され、現在、セゾン現代美術館で開催中のグループ展『地つづきの輪郭』にも参加しています。

増子は宮城県で生まれた後東北の各地を転々とし、その風土で培われたものを作品のインスピレーションにしてきました。2018年に栃木県に居を移した際は、美しい菜の花畑がトラクターで土に混ぜ返される緑肥農法に衝撃を受け、サショー紙を大地に見立て、菜の花から色を貰い染色した刺繍糸で、耕すように縫っていく「よくよく、沃野」シリーズを制作しました。

2020年世界がコロナ禍の中拠点を岩手県葛巻(くずまき)町に移し、そこでもその土地の風土や郷土を見つめ、常に変わりゆく中洲という存在を観察しながら、毎分毎秒変化するその表情に魅了された増子は、そこに人間的なものを見出し作品にしようと試みました。 また、郷土資料館で「葛巻に木彫り熊を作って北海道へ売っていた人いた」という一文に出会った際には木彫り熊に興味を持ち、葛巻の木彫り熊についてリサーチを始めると、北海道の民芸品として親しまれているヒグマの木彫りを真似するうちに、東北の葛巻に生息するツキノワグマへと姿を変えたことを知り、そうした「変容」に着目しました。それは、「その土地で彫られていた木彫り熊を探し、真似るうちに、私はいつの間にか自身の制作も乗っ取られていきました」と増子が語るように、増子自身の作品をも変容させたのでした。

「中洲」と「月の輪を持つ木彫り熊」という一見何の繋がりも見えない2つのモチーフのシリーズですが、増子はそこに「変容」という共通点を見出し、狭間にいる者として制作した作品約20点を展示いたします。増子らしい視点でのアプローチによる交差する展示を、ご堪能いただければさいわいです。